体動制限考察理論.2
不調と動作の関連性を紐解いていく。それも体動制限考察理論の特徴です。
体動制限考察理論は症状をしっかり考察して、辻褄の合う原因を見つけます。それは前ページですでにお伝えしましたが、体動制限考察理論のもうひとつの特徴として、動作やタイミングの詳細な考察があります。
身体のどこを動かせば痛みが生じるのか、身体をどのように動かせば痛みを覚えるのか。体動制限考察理論は痛みと体動(動作)の関連性を紐解いていき、不調を引き起こしている根本原因を導きだします。
実際にあった症例をもとに、具体的な説明をさせていただきます。
症例1
- 四十代の男性、Sさんの症例です。何年も前から腰痛でお悩みだそうです。
- 椅子などに座った状態から、立ちあがったときに、特に強い痛みが起こります。
- 他院さまでは腰椎変位(腰の骨の歪み)が原因と告げられたそうです。
症例1の体動制限考察理論
立ちあがったときに特に強い痛みが起こるのであれば、この動作が痛みと関連しているのは明らかです。立ちあがる動作と痛みの関連性を紐解けば、腰痛の根本原因が明確になるはずです。
椅子から立ちあがるという動作では、実は腰をほとんど動かしません。実際に立ちあがってもらえれば、よくわかると思いますが、腰は真っ直ぐに伸びたままで動きません。
立ちあがる動作で主に動くのは、腰ではなく股関節です。約90度に曲げた股関節を真っ直ぐ伸ばすことで、立ちあがる動作は完了します。
つまり、Sさんは腰を動かしたときではなく、股関節を動かしたときに痛みを感じています。そこから股関節が腰痛に影響していると判断できます。
股関節が影響していなければ、股関節をどう動かしても、腰に痛みは発現しません。影響しているからこそ、股関節を動かすと、腰に痛みが生じます。
Sさん腰痛は股関節に原因があります。
症例2
- 五十代の女性、Kさんの症例です。3週間ほど前から右の手首に痛みがあります。
- 手首を反っても曲げても痛みは生じませんが、手首を回旋(捻る)させると親指側に痛みが発現します。
- 病院の検査では手首の靭帯に問題があると診断があったそうです。
症例2の体動制限考察理論
Kさんの手首痛は手首を捻る動作で痛みが生じますので、手首の回旋運動と痛みの関連性を紐解いていけば、手首痛を発生させている根本原因にたどり着くはずです。
実は手首を捻ろうとしても、手首の関節はわずかしか捻れません。手首を捻ろうとしたさいに、主に捻れるのは肘の関節です(捻り方によっては肩も捻れますが、通常の動きだと肘が捻れます)。
つまり、Kさんは手首を回旋させたときではなく、肘を回旋させたときに痛みを感じています。肘の回旋運動で痛みを覚えるのであれば、肘の回旋運動に問題があると考えられます。
Kさんの手首痛は手首の靭帯ではなく、肘に要因があると判断できます。
症例3
- 六十代の女性、Uさんの症例です。1ヶ月ほど前から右膝に痛みがあるそうです。
- 平地の歩行時には痛みがありません。ですが、階段をのぼるさいに強い痛みが起きます。おりるさいに痛みがありません。
- 病院のレントゲンによる検査によって、膝関節に軟骨にわずかなすり減りが認められました。わずかなすり減りでも、痛みが生じることがあると、診断があったそうです。
症例3の体動制限考察理論
平地を歩行するときも、階段をのぼるときも、階段をおりるときも、どの動作でも膝関節は動きます。もし、膝関節に痛みの原因があるとすれば、どの動作でも膝関節は動きますので、どの動作でも痛みが生じるはずです。
ですが、Uさんが訴える膝の痛みは、階段をのぼる動作のみで発現します。ということは、階段をのぼる動作時のみに働く部位はどこか、それを紐解けば痛みの原因も紐解かれるはずです。
階段をのぼる動作で主に働くのは臀筋群(お尻の筋肉の集まり)です。臀筋群以外の筋肉や、膝関節や股関節の骨格も働きますが、それらは別の動作でも働きます。階段をのぼる動作だけに焦点を当てると、臀筋群という答えが頭に浮かびます。臀筋群は階段や坂をのぼるさいに働く筋肉です。
また、臀筋群に含まれる大臀筋と小臀筋は、膝に痛みを生じさせると、東洋医学ではよく知られています。臀筋群が働く階段ののぼりで膝に痛みが生じるのであれば、Uさんの症状は大臀筋と小臀筋が原因だと考えられます。
最 後 に
以上の3つの症例のように、体動制限考察理論では、痛み(不調)が起きる動作を精査し、痛みと動作の関連性を紐解いていきます。それによって得た情報をもとに、痛みの根本原因を導きだします。
そのため、整体前に症状について詳細をお伺いしますが、少し長い時間を要することがあります。お手間をおかけしてしまいますが、ご協力をよろしくお願いいたします。
また、上記の[体動制限考察理論での考察]はあくまで当院の独自の考えとなります。他院さまや病院の判断を否定するものではありません(前ページでも同じことをお伝えしましたが、大事な内容ですので繰り返させていただきました)。